* 白 * 約束は?

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「何度でも言える。 お前が好きだ。 きっかけは手が触れただけだけどこの気持ちは嘘じゃねえ。 あの時好きにならなくても、いつか好きになってた。 お前が好きだ。 手を握ったから。 簡単過ぎても好きになったから。 これから全部好きになるから」  イゼは返事どころか反応できずに固まっていた。 第三者の客観的な意見としてはまんざらでもなさそうだ。 「出かけてくる。 用事を思い出した」  これ以上ラブシーンを見学するつもりはない。 そそくさと退散しようとしたら、イゼにすがるような目で引き留められた。 「そいつのことは頼むぞ」 「そんな、将来のことを急に決めろって言われても……」 「馬鹿、そういうことじゃない。 今はそばにいてやってくれ」  イゼは安心した顔で何度も頷いていた。  アパートを出て人気のない道を歩く。 空は明るく、すっかり昼になっていた。 襲撃された夜明けからそんなに長く呆然と時間を過ごしていたのだと驚く。 昼間の明るさにも随分慣れた。 サングラスを使わなくてもさほど不自由はない。  どこへともなく歩きながらアリオのことばかり考えていた。 謎の力を持った最強の種族、アリオはその中でも強者の部類なのだろう。 そうでなくては嫌になる。  どう考えても三人では勝てない。 シャスカはまだしも、ミースや他の前任者が協力してくれるだろうか。 アリオだけでなく、彼の前任のアイジャックも必ず出てくる。  しかしなによりシャスカをこの戦いに巻き込むのは気が引ける。 イゼがエルーにそう思うように、せっかくこちらで掴んだ幸せを邪魔したくない。 だからと言ってこのまま三人だけで戦えば、犬死にしてこの世界は黒族の手に落ちるだろう。 それでは彼らにとっても意味がない。 そうは思っていてもどうしても気が引ける。
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