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「この辺りだけでも我々にとって過ごしやすい環境にしよう。
少なくとも夜明けまでは。
用事の間気を散らしたくないだろう?」
返答はせずに角を出す。
体の奥から力が沸きあがるのを感じた。
どんな理由があろうと陪審員同士で争い、更に王族の命を奪ったとなればただでは済まない。
問答無用で地球の監視任務など終了だ。
国家間の戦争にも繋がるだろう。
その後の地球の安全は生き残った者達に任せるしかない。
自分が挑むべき課題はアリオとの戦いを生き死にのレベルにまで持ち込むことだ。
それは心配しなくてもアリオがやってくれるだろう。
ただで殺されるつもりもないが。
「わかっているなら話は早い。
さあ、始めようか」
もう手の届く範囲まで迫っていたアリオの口角が不気味に釣り上がった。
◇◆◇◆◇
始めからわかっていたことだが、力量差は途方もなかった。
いかなる攻撃もいなされ、防がれ、嘲笑われた。
今打ち出した拳も受け止められ、喉を捕まれる。
「軽い。
軽すぎるな。
貴方の覚悟もまるで感じられないほど軽い。
いやはや、誓いの力が使えない白族がこれほど不様だとは」
片腕で持ち上げられ、小石でも投げるような気軽さで放り出された。
植樹にぶつかり、次に着水した。
池に投げ込まれたようだ。
「もういい、面倒くさい。
欲求不満は残りの連中に解消してもらうとしよう」
着水する前にそう聞こえた。
ロットを、イゼを既に標的にしている。
それはやらせない。
彼らは異種族間の恋愛が成就するか否かという問題と戦わなければならない。
しかし水から飛び出して、それから何をする? アリオは一瞬で戦闘不能に陥れるだけの力を持っているはずだ。
それをしなかったのは彼が遊んでいたからに過ぎない。
今再び立ちはだかっても、命を摘み取られるだけだ。
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