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思考が現在に戻ってきた。
今こうしてここにいる最大の要因をそっくり抜き出した夢を思い返している間、眠りを吹き飛ばした耳障りな音がずっとやかましかった。
しかしそれだけなら害はないので放っておく。
ところが同居人はそうは思わなかったらしく部屋に入ってくるなりその音を止めた。
次いで言う。
「もう九時ですよ。
朝ごはん片付かないからいいかげん起きてくださいよ王子」
この世界に来るまでは随分長い間聞いていなかったが、来てからは一日としてこの声を聞かない日はない。
「うるさい太陽は嫌いなんだ。
それに王子はやめろ。
こちらでは不自然だ。
キュイでいい」
「その名前も不自然ですよ。
ちゃんと考えてあげたじゃないですか」
毛布から頭だけ出して見ると、柔和な顔がそこにあった。
わざわざ姿勢を低くして頭の高さを合わせている。
半年前から、要するにこちらの世界に来てからの同居人、シャスカ。
こちらの世界ではなにやらソーホーとかいうことをしているらしいが、詳しいことはわからない。
当然彼も鬼だ。
世間的には彼の甥ということで居候している。
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