* 白 * 約束は?

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とにかく敵が多い。 否、敵しかいない。 「今回我々が派遣された目的は黒ではあるまい? 私怨は捨て置け」  冷たく言うとロットはむくれてそっぽを向き苦々しく呟いた。 「ミースが行方不明になっています。 先任の青からの連絡です」  穏やかでない内容に自然と眉が動き、ロットのふくれ面はみるみる憎悪に染まっていく。 「最後に連絡があったのは十日前メールで。 宛先は先任の青、トイト氏。 内容は『捜さないで下さい』の一言っきり」  話はこうだ。  青の陪審員。 ミースは二週間前、昼頃ふらっと青の先任者トイトの部屋を出たきり戻らなかった。 連絡用にトイトが持たせていた携帯電話も置いていった。 ミースは以前から使命にプレッシャーを感じていたらしい。 「原因はわからない行き先の見当もつかない。 トイトはどうも国は捨てたと考えているらしくミースとはほとんど接触がなかったとか。 だから連絡が今頃になったんでしょうが」  知人のいない世界で唯一縁のある相手と同じ空間に住みながら触れ合いがないのなら相当な孤独を味わったことだろう。
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