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部屋に存在は二つ。
窓から広大な森を見渡している老齢の鬼。
その背を烈火の如き憤怒で睨み据えている若い鬼。
視線は窓の外に向けたまま、ぴんと背筋を伸ばした姿勢は崩さず老齢の鬼が口を開いた。
「学んでいるとは思うが、地球人と我々の視覚的な大差は誤魔化しが効く。
彼らは我々の正体を判別するには視覚に頼らざるを得ない」
「そんなことは聞いていません! 父上! なぜ地球が?」
努めて疲れた口調で説明したがあっさり跳ね付けられ、老齢の鬼は目を閉じたまま振り返り若い鬼を見た。
若い。
銀の頭髪も艶やかで薄暗いこの世界ですら輝き、髪と同じく銀の瞳もエネルギーに満ち満ちている。
「我が最愛の息子にして白の王子、キュイよ。
まずは息を整えよ。
そう急いては確かなこともまやかしに感ずるだろう」
「倒すべきあやかしは決まっています。
迷うことなどありえません。
なぜ赤・青・黄と合同で黒を叩かないのです? 争うべきだとは言いませんが、他世界を侵略するよりは何倍も賢い」
他世界に手を出してはならない。
不安を拭う為(どんな種の生物が暮らしているか・侵略される可能性はないか)の探索以外では彼らはその掟を守ってきた。
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