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夕鈴大学も、一般的な大学と同じようにサークルがある。サークルといっても多種多様であり、野球やサッカーなどメジャーな部から企業開発推進サークルと言う珍妙なものまである。
そんな星の数ほどもあるサークルを掛け持ちする生徒も、当然いる。蒼兎、玉藻もそんな生徒の一人である。因みに蒼兎は軽音楽、ランニングサークルを掛け持ちし、玉藻は軽音楽――主に歌詞の提供に留まっているが――と茶道、そして演劇部を掛け持ちしている。
同じバンドで活動している訳ではないが貴重な二年同士ということもあり、二人は経営学科と看護学科と言う学部の壁を越えた交流を持っている。
「んで、今日はいつまで授業?」
「二限以外全部」
「うげ」
正直に「ウソだろ?」という顔をする静波。
経営学部はそこまで授業とらなくても卒業できる事を伝えると、玉藻は少しだけ羨ましそうに目を細めた。
「え、じゃあ蒼は今日の授業は?」
「今日は三限の会計学基礎と五限の英語だけだな。毎日二、三コマしかとってねえな」
「えー!?」
毎日ほぼ全てのコマに授業をとらされている玉藻からしてみれば、信じられない位の緩さだ。
恨みがましい目で目の前の暇人を睨みつけていた彼女だが、ここではたと思った。
「蒼、そう言えばキミどうして学校にいるの?」
今は二限の間。大勢の生徒でごった返す予定の食堂も、今はまだ人影も疎ら。多くの椅子が空席であり、埋まっている場所に腰掛けている生徒は大半が勉強用に活用している。
そんな空間に静波がいることを、玉藻はやや不思議に思った。
「ああ、今日は親友待ち」
「へえ、蒼の親友か……」
「そ。高校時代の同級生で、今はオレのいっこ上」
蒼兎――玉藻は彼を親しみの意を込めて蒼と呼ぶ――がさっきから食堂と外を繋ぐドアを気にしていたので、誰かを待っているのは想像できた。
と、そんな事を思っている矢先。静波が突如席を立った。そして、
「お、来たねカイ!」
楽しみな出来ごとに我慢できない子犬の尻尾のように手を振った。驚き、そして振り返るとそこには。
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