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「何で、野郎に貸さなきゃいけないの?」
「ほらな、コイツこーゆー性悪だから……。」
俗に言う、類友ってヤツですか?
はーっと溜息を吐き出して、机の中から教科書を取り出していると、私の動きを見て、長沼が嬉しそうに
「お、やっぱアホ子は優しいなっ!」
と、懲りもせず言うから、手にした教科書を長沼に向かって思いっきり投げ付けた。
けれど、ギリギリの所で避けられてしまった。
「うわっ、暴力反対」
落ちた教科書を拾い上げて、パタパタと埃を払う長沼を睨みつけた。
「うっさいっ、アンタが悪いんでしょ?今度、アホって呼んだら許さないからっ!」
「あー…分かった分かった。んじゃ、借りてくねーアホ子。」
私の頭をポンポンと撫でてから長沼は教室を出て行った。
何にも分かってねー…。
「も、やだ。」
椅子に座り込んで呟くと
「何だかんだ言っても優しいんだから豊崎は……。」
隣から、憐れむ様な工藤くんの声が聞こえた。
。
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