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「お姉ちゃん、起きてよー。もう会場着いちゃったよ?」 「ん……」 私は自分のを呼ぶ誰かの声で目を覚ました。 「お姉ちゃん大丈夫?」 ゆっくりと目を開け、私にかけられる声の主を探して首を捻る。 弟の和人が私を心配そうに見上げていた。 お子様用のワイシャツにネクタイをし、その上からブレザーを羽織っている、下は灰色の膝上半ズボン。 小学校の入学式にでも出るかのような、いかにも『お坊ちゃま』という形容が似合う格好をしている。 「……お姉ちゃん?」 今にも泣き出しそうな目で私を見上げる弟。 ……実際何を心配しているのかよく分からない所ではあるが、どうやら心配をかけてしまったようなので 「心配かけてごめんね、大丈夫だよ。」 と返すことにした、そして首を巡らし状況確認をする。 5人乗りの乗用車。その後部座席で私は眠っていたようだった。 「えっと……」 私の頭が少しずつ覚醒していく。 そう、確か従兄弟の結婚式に出席するために、家族皆で早朝に起きて正装し、車に乗り込んだんだった。だから和人もあんなお坊ちゃまみたいな格好を。 かくいう私も、黒を基調としたワンピースに長い髪の毛を同じく黒いシュシュでまとめあげ正装している。 ふと前に目を向けると、運転席からこちらを覗きこむ人物と目が合った。 奈津美叔母さん。関係的には私の母方のお姉さんにあたる。おばさんの家が私の家と結婚式場との調度中間辺りに家があるので途中で拾って来たんだっけ。 黒を基調とした浴衣姿に、最近毛が薄くなってきたと愚痴っていた髪にパーマをかけ、そこへ所せましと突き刺さっている簪の飾りが揺れる髪を掻き分け、何故かおばさんが目を真ん丸に開き驚いたような顔を浮かべている。 「あのーー……どうかしました?」 余りの不自然ぶりに私が尋ねると。 「あ、いやごめんなさい何でもないの。」 と、首を横に振りながらガサガサとシートベルトを外し始めてしまった。 「お姉ちゃん早く行こ!!」 私が首を傾げているのもつかの間。 私を起こした張本人である弟の和人が私の手を引き車の扉を開き飛び出す。 「あ、ちょっと!!」 私も引っ張られて車から飛び出した。
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