黒の招待状

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決して広くはない部屋。 その部屋の中に、誰かが音も無く立っていた。 月明かりで姿ははっきりしている。 艶やかな黒髪。 けど、男の人みたい。 ずーっと私に背を向けていて、顔が窺えない。 「……あのぉー……。 誰、ですか……?」 恐る恐る、聞いてみた。 すると、男性は私へと振り返った。 呑んだ息を、また呑み直した。 美麗な顔立ちの……男性と言うより、まだ若い青年と言った感じだった。 黒い短髪と同じ真っ黒な瞳。 あまりにも、綺麗過ぎる。 「……」 「……」 私も青年も、何にも言わない。 私は言葉を失っているんだけど、彼は喋れる筈なのに言わない。 「……あの……」 「……」
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