黒の招待状

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黒の招待状

薄気味悪い森の中。 小さな祠が、飾りのように立っている。 祠の屋根に座る青年。 それを見上げる女性。 「今宵は、どんな展開になるかしらねぇ」 甲高く笑う女性。 「さぁな」 愛想の無い返しをする青年。 二人の会話は、長くは続かない。 「……今日は、俺の番でいいよな?」 青年が切り出す。 珍しかったのか、女性は目を瞬いた。 「……いいけれど、珍しいね。 貴方が進んで引き受けるなんて」 「あんたに任せると、酷い事になりそうなんで」 「失礼しちゃう」 湿気で纏わりつく髪を指で退かす。 「それに、酷い事になるのは貴方も一緒でしょ?」 「……」 青年は屋根から飛び降りた。 「人選びは済んでるんだろうな」 「当然。 ちゃんと招待しておいたわ」 「たく……何で毎度女ばっか選ぶんだ」 「いいじゃない。 貴方だって嬉しいでしょ?」 「別に」 青年と女性は、月を見上げた。 これから集まる客人達を待ちわびながら。
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