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「俺 もうちょっと かかるから 座って待ってて…。何か飲む?」
出来るだけ 一緒に居たいから時間を伸ばすように仕向ける。
「うん コーヒー」
明るく答えたキリに 少しだけ後ろめたさを感じながら シュンは煎れたてのコーヒーを差し出した。
キリは 砂糖とミルクが 絶対に必要だからカップの横にセットする。
「シュンは ホント気が利くよね~」
そんなのは当たり前で…。
でも いつも 肝心な所で気が利かない。
意地っ張りで素直じゃないし たまに すごく自分が嫌になる時がある。
キリは そんな自分を嫌になる事があるのだろうか?
いや…あるとしたなら今なのかもしれない。
何だか どんどん 自己嫌悪に陥って行く。
最後の皿を仕舞って 片付けが終了してしまった。
「シュン 終わった?」
待ち切れないかのように キリがキッチンを覗いた。
「終わったよ」
呟くように答えると はい…と紙袋を渡された。
「荷物 持ってくれるんでしょ?」
と キリがニコリと笑った。
どうやら送る許可が出たらしい。
俺は 嬉しくて でも 恥ずかしくて 頷く事しか出来なかった。
荷物を互いに ひとつづつ持ち秋庭家を後にする。
道のりが 遠ければ良いのに ヤツのマンションまでは 歩いて15分くらいだ。
あまり 遠すぎるのも嫌だけれど こうも近いと別れが早くなるから がっかりしてしまう。
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