マニアックス 夏休み

95/98
256人が本棚に入れています
本棚に追加
/1076ページ
「夏休みの課題 忘れてないよな?」 会話が無いから ふっと思い付いた事を言葉にしてみる。 「大丈夫だよ。ちゃんと チェックしたし…」 何で そーゆうトコだけ しっかりしてんだ? 忘れていれば それを口実に また キリん家に行かれるのに…。 あとで 絶対に 忘れ物を探してやる! 「着いた 着いた」 珍しく あまり 話さなかったキリが マンションのエントランスでそう呟いた。 ここで 帰されまいと俺は荷物を握り締めた。 自動ドアが 開いてキリが 入っていく。 だから 俺も 当たり前のように着いて行った。 玄関まで来ると キリが振り向いた。 「あがってくでしょ?」 そう聞かれて 俺は うん…と頷いた。 また ここで 一緒にいられる時間が引き延ばされた。 よしっ! 大丈夫…俺は嫌がられてない。 「お邪魔します…」 と 夏休みの最初以来の訪問に胸がときめいた。 つーか 最後 ここに来たのは あの水着の撮影会だ。 恥ずかしい記憶が 蘇り シュンの顔は茹でダコみたいに真っ赤になった。 「シュン 適当に 座ってて…。俺 ちょっと 飲み物 買ってくる」 たったそれだけの事なのに シュンの心に不安が過ぎる。 「お…俺も 一緒に行く!」 慌てて玄関まで 追い掛けるとキリの姿は無かった。 ここは オートロックだから 自分が出てしまうと中には入れない。 万が一 キリと すれ違ったら もう会えない…。 などと 大袈裟に考えてしまった。 キリは すぐに戻ってきた。 近くのコンビニの袋を抱えて ペットボトルを シュンに渡してきた。 「レモン水で 良かった?」 キリから ボトルを受け取り シュンは うん…と 頷いた。 「何か 結構 汚いね…この部屋…。シュンが 帰ったら 掃除しなきゃ」
/1076ページ

最初のコメントを投稿しよう!