マニアックス 二学期

2/96
256人が本棚に入れています
本棚に追加
/1076ページ
ーいよいよ 2学期が始まる。 「ヒカルくん…忘れ物は 無い?」 綾人が ニッコリ笑いながらハンカチを差し出した。 「あ…ありがとうございます」 ヒカルは ハンカチを受け取り 靴を履いて玄関の扉を開けようとした瞬間 背後から 綾人に抱きしめられた。 ドキリと心臓が鳴り響く。 「本当なら 君をずっと閉じ込めて置きたいんだけど…」 そう耳元で囁かれただけで ヒカルの身体に甘い痺れのようなものが駆け巡る。 「ぼ…僕は 別に…学校に行かなくても良いんです…。綾人先生と ずっと一緒に居た方が良いですから…」 そう答えたけれど 綾人は 一瞬 ギュッと力強く抱きしめると ヒカルを腕から解放した。 「…学校には行かなきゃだめだよ?ごめんね…変な事 言って…。今日は 始業式で早いから 昼は何処かで 一緒にランチをしよう。迎えに行くから」 解かれた腕の体温を寂しく感じながらも ヒカルは はい…と頷いた。 「いってらっしゃい」 と 普段は無表情な綾人が ニコッと笑って送り出してくれる。 その笑みは 綺麗な絵画のようで ヒカルは顔を赤らめながら行って来ます…と 玄関から 一歩足を踏み出した。 そう ヒカルは前のヒカルとは違う。 綾人によって 調教された新しいヒカルなのだ。 「おはよう ヒカルくん」 同じマンションに住む住人達に挨拶されてもキチンと 返事が出来る。 尚且つ『今日も いい天気ですね』と付け加えられる程の会話力まで身についた。 綾人に言われたのだ。 自ら進んで声をかけるのでは無く。 声をかけられたら同じ様に答えていれば それだけで 好感度は上がるのだとー 自分に 今 必要なのは 好感度だと会話術やら会釈の仕方から微笑み度まで全て叩き込まれた。
/1076ページ

最初のコメントを投稿しよう!