マニアックス 二学期

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けれど無理強いな事は決して無かった。 ホンの些細な気遣いだけで 他人の評価は上がるらしい。 悪行三昧だったヒカルにも 出来るくらい それは ホントに些細な事…。 そして それを繰り返すうちに人間はイメージを保とうとする。 いい子でいると いい子でいなきゃならなくなる。 綾人の教えは そうやって 今のヒカルを作り上げた。 今ヒカルは 好感度を上げる為に必死で そして そのイメージを崩さないように必死なのである。 そして 最も嫌われたくない人物が綾人なのだ。 綾人に 捨てられないように ヒカルは 今までで 一番 懸命に自分と向き合っている。 無理矢理 攫った相手の筈なのに 最初は抵抗だってしていたのに… 夏休み期間で ヒカルにとって 綾人は無くてはならない存在となっていた。 そう…綾人は ヒカルにとって 唯一無二の「ご主人様」なのだ。 ー僕は 今日も ご主人様の教えの通りに頑張って参ります。 だから 帰ったら ご褒美 下さいねー ヒカルは 空を仰いで そんな事を心の中で呟いた。 白凰高校へは 徒歩20分。 軽やかな足取りで学校へ向かう。 校門では 同じ制服を着た男子が ゾロゾロと登校していく。 ヒカルの足が不意に止まった。 昔の自分を良く思わない生徒は大勢いるだろう。 そんな敵の陣地に 今、丸腰の自分は飛び込もうとしている。 怖いー あの校門を くぐるのが とても 怖いー 目に見えない恐怖と不安で身体が固まってくる。 震え始めた身体が体温を奪っていくようだ。 こんな事態を ご主人様である綾人に報告したら 罰が与えられるかもしれない。 罰だけは 嫌だー
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