雙の道 弐

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ガチリと固まっていた俺は何とか冷静を装い、鏡を掴むと莉亜に突き付けた。 『ほら、まだ見て無かっただろ。見てみろ。似合うだろ簪』 「え?あ」 『見たか?見たな?まぁ帰ったらもっとゆっくり見れば良い』 「え、え?」 俺は戸惑うばかりの莉亜から鏡を取り上げると、風呂敷に包み直すが随分と不恰好になった。 が、気にしてる暇はねぇ。 早くこんな人気の無い所から脱け出さねぇと、危ない。 『…』 莉亜の貞操が。 ……。 おい、総司。 拳骨かまして悪かったな。 「ひ、土方はん?」 『…ん?準備出来たか?』 「はぁ」 俺は立ち上がり、軽く袴を払うと刀を腰に差す。 釣られて立ち上がった莉亜も着物を払い、有平糖の包みを手に取り自らの袂に入れた。 「あの…急な用でも?」 『いや?お前とのんびり帰るつもりだが?』 「…そ、どすか。良かった」 ニコリと笑う莉亜の手を取って、なるべく柔らかく笑って頷いた。 『夕餉の支度も心配要らねぇし、ゆっくり帰ろう』 「…はい」 素直に喜べ無いのはきっと、仕事を任せっ切りな事への後ろめたさからだろうな。 『そんな顔する必要無い。まだ遠慮してんのか?』 「え…」 『行くぞ』 返事も待たずに手を引いて歩き出した俺に、慌てて付いて来る莉亜を気遣いながら土手を登った。
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