恋の道 壱

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「ほんま綺麗な梅どすね…」 警戒心が消えたのか、穏やかな声で話し掛けられて肩の力が少し抜けた。 『…あぁ、綺麗だ』 間近に居たのにろくに見てなかった梅を改めて見渡し、その見事さに少し目を細める。 そうだ。 俺は梅を見に来たんだった…なのに。 今、気になるのは隣の女。 …は?…気になる? 気になってるのか? 分からん!何故だ!? さっきから気が落ち着かない。 必死に平静を装っているが、胸は五月蝿くドクドクと変に脈打ったまま。 ……。 ハァ…意味分かんね。 もう考えんのは面倒だ…気のせい気のせい。 と、溜め息を吐いた時、女はハッとした様に俺に向き直り、ペコリと頭を下げる。 「ご親切に、お懐紙をおおきに」 まだ少し硬い、ぎこちない笑みと共に俺に向けられた真っ直ぐな視線。 それに合わせるとドキリと大きく胸が鳴った。 何だ!? 慌てて目を逸らし梅の花を見上げる。 『気になさるな。可愛らしい女子に使われた方が懐紙も喜ぶ』 ウッ…また変な事口走っちまってるぞ…落ち着けって! 妙な汗が背中を伝う感触に顔をしかめかけた時、クスッと漏れた声に思わず隣を見る。 「懐紙が喜ぶやなんて、面白いお侍様どすなぁ」 …! わ、笑ったぞ!
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