恋の道 壱

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『……』 クスクスと笑う姿を見て俺は何ともむず痒い様な、それでいてホワリと胸が温かくなる様な… 不思議な感覚に襲われる。 愛らしい笑い顔。 知らず口元が緩く上がる。 「…お侍様?」 キョトンとした女を尻目に俺は羽織を脱ぎ、先程からずっと寒そうに身体を縮込ませている女の薄い肩に掛ける。 「え、あの!」 『月夜はよく冷える。何も羽織らずに出て来るなんて風邪でも引きたいのか』 そんな細っこい身体じゃ直ぐに病に負けそうだな…。 って…また気に掛けてるじゃねぇか。 わざわざ見ず知らずの女の心配をする様な奴だったか?俺は。 …違うな。単に自分が暑かっただけだろ。 そうだ、俺が脱ぎたかったからだ。 「そんな!お侍様が風邪引いてまいます!」 慌てて羽織を取ろうとする手を思わず上から包み止める。 ピクッと止まった小さな手は…やはり冷たい。 『良いから。掛けときな』 掴んだ手をゆっくり離して内心の動揺をひた隠し、ズレた羽織を肩に掛け直してやる。 手に触れた時…一瞬離したくないと思った、気がする。 そりゃ動揺するだろ。 そんな事思っちまうなんて。 有り得ねぇ。
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