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『風邪でも引いたら厄介だ。それに可愛い女子に使われた方が羽織も…』
「喜ぶ?」
少し悪戯っぽく笑う顔が目の前にある。
『ッ…あぁ。その通りだ』
し、心の臓が!急に顔を覗き込むなっての!
「ふふッ。そお言わはる思いました。せやけどウチ可愛らしなんかありまへんのに」
女は申し訳なさそうに瞳を伏せる。
は?
いや充分過ぎる程可愛いと思うが。俺が知ってる誰よりも…と思うんだが?
自覚無し、か?
「気ぃつこて貰って」
『アンタは可愛い。俺は世辞など言っちゃいないが?』
伏せていた瞳を見開き、驚いた顔で俺を見上げる女の視線を逸らさぬ様、頑張ってジッと見つめ返す。
「…お…おおきに…」
月明かりのもとでも分かる程、頬を染め慌てた様に女は瞳を逸らして、パタパタと両手で顔を仰ぎ始めた。
…照れたのか。
つか、言い慣れない事を言っちまった俺はよ…とっくに羞恥と戦っていたんだがな…。
やれやれと思いながらも、隣の女の初々しい反応に俺は口の端を少し持ち上げる。
勿論、本心から言ったのだが、女を少しでも慌てさせた事に変な満足感が沸いた。
何だか俺ばかり焦っていたからな…まぁ気付かれてないだろうが。
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