恋の道 壱

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『風邪でも引いたら厄介だ。それに可愛い女子に使われた方が羽織も…』 「喜ぶ?」 少し悪戯っぽく笑う顔が目の前にある。 『ッ…あぁ。その通りだ』 し、心の臓が!急に顔を覗き込むなっての! 「ふふッ。そお言わはる思いました。せやけどウチ可愛らしなんかありまへんのに」 女は申し訳なさそうに瞳を伏せる。 は? いや充分過ぎる程可愛いと思うが。俺が知ってる誰よりも…と思うんだが? 自覚無し、か? 「気ぃつこて貰って」 『アンタは可愛い。俺は世辞など言っちゃいないが?』 伏せていた瞳を見開き、驚いた顔で俺を見上げる女の視線を逸らさぬ様、頑張ってジッと見つめ返す。 「…お…おおきに…」 月明かりのもとでも分かる程、頬を染め慌てた様に女は瞳を逸らして、パタパタと両手で顔を仰ぎ始めた。 …照れたのか。 つか、言い慣れない事を言っちまった俺はよ…とっくに羞恥と戦っていたんだがな…。 やれやれと思いながらも、隣の女の初々しい反応に俺は口の端を少し持ち上げる。 勿論、本心から言ったのだが、女を少しでも慌てさせた事に変な満足感が沸いた。 何だか俺ばかり焦っていたからな…まぁ気付かれてないだろうが。
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