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パタパタと仰ぎ続ける女の横顔を、お?睫毛なげぇな…などとバレない程度に横目で見つめていると、パタリと手が止まる。
「…煙管の匂い…」
呟いた女の声に俺は、あぁと思う。
『気付かなくてすまない。煙管がお嫌いだったか?』
先程までのつまらん席で、気を紛らわす為にふかしていた事を思い出し。
…吸わなきゃ良かった…と何故か後悔に襲われる。
「…いえ…ウチはたしなみまへんけど嫌いではありまへん。でも…」
ふと梅を見上げた女は…俺には哀しげに梅の向こうに何かを見ている様に感じた。
『…でも?』
その姿はまた儚げで…初めて見た時と同じく俺は目が離せなくなる。
愛らしさと美しさの混ざり合った、独特な女のその表情に―…
「…いいえ、何でもあらしまへん」
女がニコと笑いながら首を振ると、右耳の下辺りで緩く結んだ髪がフワリ…と揺れた。
『…そうか』
俺は煙管の匂いが平気だという事への安堵と共に、余計な勘を働かせる。
きっと…身近な人間に吸う奴が居たのだろう、と。
ソイツは…多分、いや間違いなく男だ。
じゃないとそんな顔で…
グッと拳を握りしめると、胸の辺りが急にチリチリと疼いた。
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