恋の道 壱

9/32
前へ
/1312ページ
次へ
そらこんな愛らしい女なら男が居て当然だろうよ。 しかし何か腹立つな。 …チッ!一体どんな―…… いや、待てって。 だから何俺は苛ついてんだ? 会ったばかりの女の事が気に… ……………。 なる!! 凄ぇ気になる! 何故だ!? ………………ッ!!? まさか…そんな馬鹿な!! 気のせい…じゃないのか? そんな事―… つか…意味が分かんねぇじゃねぇか! 幾ら可愛いとはいえ、こんな出逢って一瞬で…この俺が!? …何故……欲しいと… 有り得ねぇって! そんな事有り…… だが…流石に… もう気のせいとも言えねぇ!! 俺は…一目で 『惚れ―』 「ホレ?」 衝撃の余り、知らず呆然と口から漏れた呟きに気付き、慌てて取り繕う。 『ッほ、ほれ。そろそろ宅までお送りしよう。何時までこんな寒い所に居られるつもりだ』 た、耐えた! のだが…帰りを勧めてどうする!何か言い方も冷たくなかったか!? しかも…折角惚れたと自覚したのに直ぐ帰そうとするとは。 何やってんだ俺ぁ。 もっと話を… 「帰る…」 ポツリと女が呟く。 言ってしまった言葉は戻せない。 仕方なく発言通りに動くか…道々で何かと話も出来る。 家も分かる筈だし、これっきりって訳にゃさせねぇ。 女に気付かれぬ様、コッソリ溜め息を吐きながら聞いた。 『あぁ…宅はどちらに』 「帰るとこはありまへん」
/1312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3094人が本棚に入れています
本棚に追加