恋の道 壱

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強張った女の顔を想像しながら見ると笑い声こそ止まっているものの、ニコニコと笑顔のままだった。 え、恐がってねぇのか? 俺に怒鳴られると、男でも畏れ戦(おのの)くってのに。 その事に安堵しながら怒鳴った拍子に外した両腕を組み直す。 「行くとこも、お金も持ち合わせて無いんで、夜が明けるまではこの梅を堪能しよ思てたんどす」 ニコリと微笑みながら梅の幹に近付きソッと手を当てる。 「朝になったらどこか、雇って貰えるお店かお宿を探すつもりどしたから、お侍様はお気になさらず」 『放って置くわけに行かんだろうが!』 女の言葉に被せて言い放つ。 全く…とんだ女だ。 家出の挙げ句、行く所が無いからってこんな場所で一人夜を明かすだと? 自覚が無いにも程がある! しかも放って置けだと? そりゃ俺だって気がねぇ女なら放って置くだろうが…って違ぇ。 兎に角!このままハイそうですかって訳にはいかねぇ。 全く…何だってこんな厄介な女に惚れたんだ俺ぁ。 ………あ? そうか… 行く所がねぇ…か。 内心、ニヤリと笑う。 少しばかり…冷静になった俺の頭が如何(いか)にして…と算段し始めた。
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