3094人が本棚に入れています
本棚に追加
女は更に怒られたとでも思ったのか…流石にシュンと深く項垂れていた。
その姿に眉が下がる。
思わず手を伸ばしたくなるのを堪えて息を吐いた。
何だか胸が痛いのは気のせいじゃねぇ…そんな姿見たく無いんだが…今は我慢だ。
さて…
『…俺はこの京の町を警固する役を仰せつかっている』
俺が静かに話し出すと、女はゆっくりと顔を上げた。
涙は無い…良かった。
もしかすると泣かれたかと実は冷々していたんだが。
『少しでも怪しい者は屯所に連れ帰って、取り調べなければならん』
俺は女の瞳をジッと見つめながら言った。
綺麗な瞳に吸い寄せられそうになる。
俺はやはり、出会って間もないこの女が本気で―…
「お役人様どすか?怪しげな者を追ってはる途中どしたんか?えらいすんまへん!そんな時にウチを気遣ってくれはったんどすね?あぁ~ウチが邪魔してしもたんやぁ…」
……この言い回しでは通じなかったか。
まぁ、そうだろな。
両頬に手を当ててアワアワしている女に溜め息が出る。
と同時に、その姿が可愛くて顔が緩みそうになる。
いかんいかんと、グッと奥歯を噛み締め緩むのを耐える。
だが、可愛いモンは可愛いだろうよ。
何だこの生き物は。
最初のコメントを投稿しよう!