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『ククッ!』
急に笑い出した俺を、女は先程までの体勢そのままにポカンと見つめていた。
『クックックッ!…アンタは…取り敢えず落ち着け。…ハァ』
あぁ、可笑しい。
息が苦しくて涙が出そうになった。
久々に、本当に久々に腹の底から笑った気がする。
笑うってのは…こんなに疲れるモンだったか?
…こんな俺でもまだ、笑い方を覚えていたんだな。
ハ~……だが久し振り過ぎて、本気で苦しかった。
「な、何笑てはりましたん!?」
固まっていた女が驚いた様に聞いてきた。
まだ気付いてねぇし。
俺は再びクッと喉を鳴らしながら言ってやった。
『まず落ち着けって。俺は嬉しいがよ、ソイツが脱げたら困るのは…お前さんだぜ?』
ニヤリと笑い、自らの袷(あわせ)の左肩辺りを指でトントンと指す。
「へ?何でどすのん?この羽織はお役人様の…」
パサッ
都合良く羽織は地面に落ちた。
「?」
自分の後ろを振り向き下を見た女は暫し固まり、ソッと自分の左袖を見る。
右手で引っ張っているのは自分の左袖だと理解出来たらしく、見事なまでに顔を朱に染め上げた。
『ブハッ』
あ~ほんとに参った。
何故、こんなに…
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