雙の道 弐

36/55
前へ
/1312ページ
次へ
『お前の唇を何処までも追って捕まえて貪り喰って―…』 「ッ!?ひじ…」 『その場で押し倒す』 「え!?」 肩を揺らす莉亜を離さずに、やんわり抱き締める。 『そのまま…抱く』 「ええ!?」 耳元で囁いていた俺から、飛び上がる様に逃げた莉亜に吹き出した。 『フハッ!ハッ!抱くってのぁ冗談だよ。ククッ!ま、押し倒すまでは本気でやるが』 「そッ…そんな無茶苦茶な…」 ガックリ項垂れる莉亜の頭を撫でて鼻で笑ってやる。 『無茶苦茶好きだから無茶苦茶になるらしいぜ?俺は。良いじゃねぇか。お前が逃げなきゃ済む話だ』 弱り切った顔を上げた莉亜に爽やかに笑う。 こちとら、お前が完全に落ちるまで色々耐えるのが大変なんだからよ。 口付け位は好きにやらせて貰わねぇと、割りに合わねぇだろ…ってのは勝手な俺の言い分か。 あ~ぁ。 始めの頃はゆっくり待つなんて思ってたが、走り出したら止まれなくなっちまった。 早く。 早く、と。 だが、それは決して焦りからでは無く。 ただ純粋に欲する想い。 ジッと広げたままで待つ俺の腕の中に、自らの意思で飛び込んで来る愛しい女が待ち遠しくて仕方ねぇ。 だから、 それまで。 『拒むのは許さねぇ』 熟れる間近の獲物を俺に。
/1312ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3095人が本棚に入れています
本棚に追加