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強い目でそれを見つめて口角を上げた。
『分かったか?』
「あ…」
一瞬、怯えた様に大きな黒曜の瞳が揺れ、また飛び立とうとしたのは俺の欲を感じたからか。
それでも。
捕食間際の小鳥は―…
『分かったな』
逃げずにその羽を畳んだ。
「…は、い」
観念した様に溜め息を落とす莉亜に、何だかんだでホッとした俺はクシャリと柔らかな髪を撫で回した。
『ん。良い子だ』
「……良い子…」
あ。
ジト~っと、見上げて来る莉亜の琴線に触れた事に気が付いて、思わず笑みが漏れた。
『フッ…いや。良い女の間違いだな』
「ぅ…」
それはそれで困るのかよ。
赤くなって言葉に詰まる姿に苦笑する。
『さて。良い女の莉亜殿?』
「…へ?」
俺のそんな言い回しに、キョトと小首を傾げて見上げて来る。
『髪がえらい事になってるけど、そのままで良いのかい』
「えッ!?」
慌てて髪をまさぐる莉亜に、買ったばかりの鏡を包みから出して手渡してやる。
『ほら』
「あ…。すんまへわッ!?な、何で…」
両手で鏡を持って覗き込んだ途端、唖然と固まった莉亜にシレッと言った。
『俺しか居ねぇだろ、んな事出来たのは。その結い上げられた髪を乱してやりたかったんだよな。この手でよ』
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