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ニヤリと満足げに笑って手を伸ばすと、丁寧に簪を引き抜いて鏡を取り上げた。
『ちゃんと結い直しな』
「…もう…」
微かに頬を膨らませ、笄を外すと自由になった髪が、ファサリと肩に広がった。
『…』
その髪を手櫛で整える、無防備で…女っぽい仕草にまた欲が沸き起こる。
ハァ。
参った…
際限がねぇ。
今すぐその髪に指を差し込み、もっと乱して…
『……』
駄目だ駄目だ。
流石にそれをやっちゃぁ、莉亜のご機嫌が何処までも斜めに向いちまうかもしんねぇ。
ハァ。
『…お楽しみは取っとくか』
ジィッと、熱い視線を送っていた目を閉じて小さく呟いた。
「え?」
『いや。何でもねぇ』
「?」
訝しげに俺を見ながらも、ササッと手際良く笄で髪を結い上げる莉亜に感心する。
『上手いもんだな』
「…ふふっ。そら一応は…。ほな土方はん?」
ニコリとした莉亜が簪を差し出して来た。
『俺が?』
「はい。土方はんに差して欲しいんどす」
『…ん。分かった』
そんな些細で可愛らしい要求に、ドキリと大きく胸が鳴る俺は何処までも…
「お願いします」
こちらを向いて微笑む莉亜の結い上げられた髪に、ゆっくり簪を戻した。
「ふふっ。おおきに」
はにかむコイツに惹かれ無い訳がねぇ。
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