雙の道 弐

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気が付いて無かったが、河原に結構な間居たらしく…陽が傾き始めている。 申(さる)の刻…夕七ツくらいだろうか? 町に戻ると昼間よりも幾分人が減ったみたいだ。 だが俺は未だに小さな手を、しっかりと繋いだままだった。 笑いながら話に夢中な莉亜が、その事に気付かないのを内心ほくそ笑む。 「ほな、土方はんは何処がよろしおすのん?」 クルクルと良く動く瞳を、俺に向けて覗き込んで来る莉亜の話の矛先は花見の事。 『そうさな。やっぱり嵐山じゃねぇか?』 「もぅ。だから嵐山はちょっと遠過ぎますて。やっぱり清水はんの方が」 『清水寺は何時でも行こうと思えば行けるじゃねぇか。折角なんだしよ、嵐山だろ』 「…うーん。ほなら朝はようから出掛けやなあかんくなりますえ?」 困った様に眉を下げてる隣の愛しい女に、フッと笑い掛ける。 『そんなに早く出なくて良い。お前の脚じゃ、どの道日帰りは無理だろ』 「へ?」 『向こうで宿を取るからよ。次の日に花見して帰りゃ良い』 「ええ!?」 ククッ! 慌ててらぁ。 そりゃそうか…この俺と一泊すんだから何かされるとでも― 「そんな―…」 オロッとした顔の莉亜に、俺はついついニヤけそうになる。 『ん?』 「そんなら…仕事が出来んくなってまいます」 『そっちかよ!』
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