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僕達の様子を怪しげに見ながら、右耳の下辺りで緩く結んでいる髪を指先で弄ぶ。
そして…煙管の葉をカツンッと落とし、静かに置いた。
「…」
…何だ、この緊張感は。
耐え兼ねた僕は、ソッとお松の手を握ろうとして…またつねられる。
「…そうですか」
ポツリと呟いた声も顔も、少し寂しそうに見えて僕は…何だか胸が痛くなったけど。
「では帰ります」
立ち上がった栄太は、いつもの飄々とした顔で…ホッとする。
「まだ良いじゃないか。江戸の話も聞きたいし…」
「あの子が居ないんじゃ此所にいる意味ないんで帰りますね」
「……」
「ぷっ」
君達は…本当に素直なんだね…
「そ、そうか。取り立てて急ぐ話も特に無い様だし明日でも…まぁ今日はゆっくり休んでると良い」
襖に手を掛けた栄太はピタリと止まり、振り返る。
「僕はあの子を探さなきゃいけないんで、ゆっくりなんてしてられませんね。あなたはどうぞごゆっくり…では」
軽く礼をしてニヤリと言うか…ギラリと笑いつつ襖を閉めた。
「…―あ!こ、コラ栄太!君は動くな!…あれ?」
慌てて追い、襖を開けたが既に気配は消えていた。
「……ハアァ~…」
何か…
凄く疲れた…
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