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「ウチは小五郎はんと一緒におるって決めたから大丈夫どす」
僕の肩に頭を持たせ掛けてまた微笑む。
「あの子は…あの子にも自分の好いたお人と幸せになって欲しい。だから…」
「…栄太の事かい?」
コクと頷いたお松の杯に酒を注ぎ、自分の杯にも注いだ。
「あの栄太がなぁ…まさかごり押しで祝言を挙げようとするとはね。僕もひっくり返ったよ」
苦笑しながら杯を煽る。
「栄太が…笑う様になったのはあの子のおかげだ。だからこそあの子に惹かれてたのは気付いてたけど…」
コンッと杯を勢い良く置いたお松が僕の目の前に膝立ちになる。
「あんなん気付かん人おまへんぇ?暇さえあればあの子に付きまとって!ウチがちょっと油断したら直ぐ手ぇ出そうとするし!」
「ちょ、落ち着い…」
ガバッと両衿を掴まれて激しく揺さぶられる。
「そらあんなんされたら誰でも嫌なります!ちょっと顔がエエからてやり過ぎどす!」
「き、君もやり過ぎだから!」
前後に揺さぶられ酒の入った頭がくわんくわんする。
吐く!吐く!
白眼を剥いているとハァ…と溜め息を吐いて解放してくれた…君も充分あの子の事になると我を失うよ…。
「一時は…ウチも小五郎はんもどうかしとったわ。あの子の気持ちも考えんと…栄太はんと一緒になりぃ、なんて…」
「う…」
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