恋の道 壱

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「堪忍してね…」 『…そいつに何か悪さでもしたのかい?』 無意識に…そう、ほぼ無意識に俺は話し掛けていた。 女の寂しげな声につい反応したというか。 しかも…何つまんねぇ事を言ってんだ俺ぁ。 「えッ!?」 心の中で頭を抱えた時、女が弾かれた様に振り返った。 『―!』 振り向いた女を見て俺は思わず固まる。 先程垣間見た時は儚げな美しい女と感じたのだが…目の前で見ると印象が変わった。 緩やかに流れる様な眉に可愛らしい鼻、思わず手を伸ばしたくなる滑らかな白い頬は柔らかそうで。 ぽてりとした唇は紅も差していないのに艶やかな桃色。 どちらかと言えば美しいよりも愛らしいって表現の方が正しいな。 かなり…小柄な身体が、余計にそう思わせるのかもしれない。 だが、印象を覆された事だけに驚いた訳ではなかった。 俺の姿を捉えたまま見開かれた大きな黒曜の瞳は、ユラユラと揺れていたのだ。 大粒の涙を溢れさせながら。 女の揺らめく視線と交わった瞬間、一際大きく俺の胸が跳ねた気がした。
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