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近藤の言うちゃんとした笑顔…それは至って普通の笑い顔の事だった。山南も当然見た土方の笑顔。
「京に来てからだね。全く笑わなくなったのは…確かに色んな事があり過ぎたが…」
浪士組として文久三年二月に上洛以来、本当に色々あった。
会津藩の後ろ楯を手に入れる為に奔走したり、落ち着く間もなく同志とのいさかいや尻拭い。
極めつけは…浪士組筆頭局長だった男の暗殺とその一派の一掃。直後の長州間者の一掃など…
「たった一年だよ。此方に来て…色々あり過ぎた…」
近藤と山南は怒涛の様に過ぎた一年を改めて思い返す。
「きっと誰よりもこの新撰組を守ろうと踏ん張ってるのは歳なんだ。局長の俺が言うのは些か情けないがね」
「近藤さん…」
「歳におんぶに抱っこで恥ずかしい話だが、俺一人だと新撰組はとっくに瓦解してた筈だ。勿論、山南君達のお陰でもあるよ?感謝してるよ」
近藤は勢い良くガバと頭を下げる。山南は慌てて膝立ちになり近藤の肩に両の手を乗せた。
「やめて下さい。貴方が頭を下げる必要などありませんよ。我々が貴方に着いて行きたかっただけなんですから」
顔を上げた近藤の瞳は微かに潤んでおり、山南は困った様に笑い席に戻る。
「ふふっ。何やら辛気臭くなってしまいましたね」
「グス…すまないね。どうも酒が回ったみたいだ」
二人顔を見合わせ小さく笑った。
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