恋の道 弐

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「余り…したくありませんが…山崎君に調べて貰いますか?」 山崎とは新撰組の諸士調役兼監察、山崎烝の事である。 敵の動きを調べ上げる任務のみならず、組の人間を取り締まる任務も担っている役職だ。 優秀な人材で近藤も土方も信頼を置いている。 「それは歳の判断に任せよう。あいつも自分の行動が危険だと承知の上で彼女を連れ帰った筈…その歳が調べようとしないのは本気で信じているからだ」 腕を組みながら、近藤はフッと笑った。 「あいつに…甘いと怒るかい?信じる、信じないなんざと」 「…いいえ。時と場合、そして相手、関係―…全てにおいて、お二人には…嘘か誠かを互いに見極められる仲…でしょう?」 「ああ」 迷い無く答え、破顔する。 山南も、表情を柔らかく崩して首を振った。 「少なくとも私は、甘いとは。それは…お二人の信頼が深いが故になせる事」 「万が一の時は、腹ぁ切るって言ってたよ。嘘吐けって言ったけど…どうも本気らしい。あの歳がだよ?」 「!腹を…あの土方君が…?」 「彼女を調べもせず受け入れた俺も同罪覚悟の上だ。ただ俺は歳を信じるだけだよ」 「…では考えの甘い私も同罪ですね。土方君が信じた彼女を…信じましょう」 ふふッと楽しげに笑って猪口を掲げる。 「まぁ、幸い彼女から不穏さは伝わってきませんしね。一応、シレッと聞いてみますか」 「さ…んな…ん君が!?歳にバレたら…流石にシバかれない?」 「大丈夫ですよ。建前上と申しますか。なので…私から言っておきながらアレですが、お忘れ下さい。さ、仕切り直しです」 「そ、そう?そう…だね。歳の為にも…兎に角!あの計画も。実行あるのみ」 「承知」 山南の掲げた猪口へ、強く合わせるのはまるで金打。 刀では無く猪口だが、カチーンと後を引く音を響かせ…消えて行った。 「「乾杯」」 優しい鬼を知る、二人の優しい協力者の夜は… まだまだ、更けない様だ。
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