恋の道 壱

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「…すんまへん…おおきに…」 柔らかな京言葉。 女の動く気配…涙を拭っているのだろう、そんな小さな動きを背中で感じる。 満開の木を見上げてはいたものの…梅の花など見てる振りだけで目に入って来なかった。 おかしい…何だ?この余裕の無さは。 つか何か妙に暑いな…ってこの寒いのに暑いってなんだよ。 しかし…どえらい可愛いらしい女だ。中々お目に掛かれるモンじゃねぇ。 きっとどこの妓(おんな)よりも……って何と比べてんだか。 「…あの…」 取り敢えずちょっと落ち着け。 いや。 俺は落ち着いてる。 いつでも冷静に―… 「あの…」 『ッ!?』 チョンっと背中を触れられ少しばかり飛び上がる。 「す、すんまへん!」 女は吃驚した俺に吃驚したのか慌てて謝ってきた。 『い、いや、すまん。少し梅に見惚れていた』 ……全然見てねぇのに…つか今の反応、凄ぇ情けねぇ。 顔に出さず自己嫌悪してると女が遠慮がちに、少し距離を置きながらも俺の隣に立ち、梅を見上げた。 その行動に一瞬ピクリと眉が上がり、又してもざわつく胸。 もう怯えてない…のか?
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