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「…すんまへん…おおきに…」
柔らかな京言葉。
女の動く気配…涙を拭っているのだろう、そんな小さな動きを背中で感じる。
満開の木を見上げてはいたものの…梅の花など見てる振りだけで目に入って来なかった。
おかしい…何だ?この余裕の無さは。
つか何か妙に暑いな…ってこの寒いのに暑いってなんだよ。
しかし…どえらい可愛いらしい女だ。中々お目に掛かれるモンじゃねぇ。
きっとどこの妓(おんな)よりも……って何と比べてんだか。
「…あの…」
取り敢えずちょっと落ち着け。
いや。
俺は落ち着いてる。
いつでも冷静に―…
「あの…」
『ッ!?』
チョンっと背中を触れられ少しばかり飛び上がる。
「す、すんまへん!」
女は吃驚した俺に吃驚したのか慌てて謝ってきた。
『い、いや、すまん。少し梅に見惚れていた』
……全然見てねぇのに…つか今の反応、凄ぇ情けねぇ。
顔に出さず自己嫌悪してると女が遠慮がちに、少し距離を置きながらも俺の隣に立ち、梅を見上げた。
その行動に一瞬ピクリと眉が上がり、又してもざわつく胸。
もう怯えてない…のか?
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