白い翼の天使

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俺の視線の先には無人のグランドがあったが、視界には入っていない。 ただ、そこを見ているだけで脳にまで映像が届いていない、そんな感じでぼーっとしていたのだった。 それはもう、老人が軒先で庭を見るかのごとく無の境地に達していたかもしれない。 その状態から現実に戻したのは、目に入る一瞬の光であった。 光はグランドからではなく上の方、2年生の教室が校舎の2階なので、3階か屋上または空からの光だと推測される。  んっ‥‥何が光っているんだ? 授業中は頻繁に外を眺めているのに、今まで一度も上からの光を感じた事は無かった。 校舎の作りは、上から見るとU字型で3階建てになっている。端が1年から3年の教室で、真ん中部分が職員室や移動教室。反対側が部活動で使う部室というように区分けされていた。 そして、部室がある棟だけは屋上が開放され、ちょっとした中庭感覚の作りになっていた。 そんな作りの校舎で、光を感じた方向に顔を向けてみる。 場所は部室棟の屋上だった。
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