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「話は分かった。その店についてはまた調査を進めよう。源さんにも報告しておいてくれ。」
「御意。」
「………で、吉岡のこととはなんだ。」
やっと本題。
僕にとってはこっちが本題。
月姫さんの情報ならたとえ耳の垢程度でも聞きたいんだ。
僕が身を乗り出せば、一君にちょっと引かれた。
「ええ。山崎君が目星をつけていた宿をここ最近調べていまして。
その中で一軒だけ、医者が出入りする宿がありました。」
「医者?」
「はい。」
ドクン、と嫌な音がした。
「詳しくは口を割ってはくれませんが、女の患者がいると、医者は言っていました。ひどい高熱で、ここ何日も下がらないのだとか。」
「女性の……患者。……熱が下がらない。」
ばかみたいに一君の言ったことを復唱する僕を、土方さんがちらっと見たのを感じた。
「そらなら納得がいく。姫さんの気配がなかったんや。高杉たちと一緒におるはずなのに、まったくその姿のかけらも見せへんねん。
せやからおかしいな思てたんやけど、もし姫さんが病人で、熱で動けないのであれば合点がいく。」
「ああ。確かにそうだな。アイツならじっとしていることなんて不可能なはずだからな。」
月姫さんが病気。
熱で何日も動けない。
ガタッ!
「ちょお!どこいくねん総司!」
「うるさい!月姫さんが病気で苦しんでるなんて、居ても立っても居られないじゃないですか!
一君!その宿を教えてください!すぐに会いに行きます!」
「お前何を言っている。こちらがどれだけ神経をすり減らして調査をしたと思っているのだ。
後先考えずに行動するのはもうやめろと、何度も言っているだろう。」
「ああもう!こんな時にお説教なんてやめてください!自分だけ、自分だけ居場所を知っていて!僕には教えてくれないなんて、不公平じゃないですかっ!」
「うるせえっ!」
ガンッ!
「っ!」
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