帰京。そして池田屋。

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そしてその夜から今日で五日目。 月姫の熱は未だに下がることがない。 なんとか京に連れ帰ってきたものの、医者に見せてもお手上げ状態。 何が原因でここまで熱が下がらないのかわからないらしい。 「晋作。今日は僕が会合に行かなければいけないから、雪のことは頼んだよ。 すぐに帰る。」 「……ああ、頼んだ。今は大事な時期だ。それに運の悪いことに狗どもがかなり嗅ぎまわっている。 古高にも注意するよう言っておけ。」 「わかった。」 稔麿は真面目な顔で答えた後、もう一度月姫の傍により額に口づけてから部屋を出て行った。 時折苦しそうに眉間に皺を寄せる月姫。 濡らした手拭いで顔を拭いてやっても、すぐに出てくる汗に俺も眉間に皺を寄せる。 「頼むから。お前だけは生きていてくれ。 お前は、ただ生きていてさえいてくれればいいんだ。」 苦しむアイツを見ていられなくなり、俺はたまらず部屋を出た。 ********************* 「また音沙汰なしなんですか。」 「音どころか気配さえわからん。あいつらが寝床にしそうな場所は何件かあんねんけど、姫さんがいる気配が全くないねん。それらしい目撃情報もまったく。」 「……本当に高杉たちと一緒にいるんだろうな。」 「それは恐らく間違いないかと。」 いつものように月姫さん情報の交換を土方さんと山崎君と、土方さんの部屋で行う。 あの日、内山を殺した月姫さん。 僕たちは次の日大坂を発った。 だから月姫さんたちがいつこっちに戻ってきたかは、山崎君の情報なしでは得られない。 .
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