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「だからお前はガキだって言ってるんだ!
自分だけが悲しんでるとか、自分だけが苦しんでるとか思うんじゃねえ!
甘ったれるな!」
突然土方さんが怒鳴ったと思ったら、空の湯呑を投げられた。
見事にそれは僕の横面に直撃して、赤くなっているであろうそこを僕は手で押さえる。
「なんだぁ?その目は。」
僕はきっと睨んでいたんだろう。
完全にキレてしまった土方さんがすごんでくる。
こうやって怒鳴られるのはかなり久しぶりで、その迫力に思わず後ずさりしてしまった。
「総司、お前はしばらく外出禁止だ。いいな。」
「そんなっ!」
「つべこべ言うな!破ったら二度と吉岡には会わせねえ!いいな!」
「くっ……。」
そういうと土方さんは僕を押しのけて部屋を出て行ってしまった。
その後を一君がさっとついていく。
「冷静になれ、総司。そんなんじゃ“アイツ”にはかなわないぞ。」
「………。」
去り際、一君が意味深な言葉を残していった。
冷静さを欠いている今の僕では、その意味が理解できなかった。
「総司、行きたいのはわかるんやけどな。今は我慢しいや。
今乗り込んでいったら、それこそ今度こそ姫さんはいなくなってしまうで。
どこに隠されるかわからへん。
大丈夫やて。姫さんはきっとよくなる。良くなれば絶対にじっとしていられんて、俺らの所に来るはずやから。」
な?と言って、山崎君も部屋から出て行った。
こういう時だけ、山崎君はすごく優しくなる。
怒られるのには慣れてる。
だけど、優しくされることに慣れていない僕の頬には、こらえきれなかった涙が一筋伝った。
こんな時に、月姫さんに会いたい。
そう思わずにはいられなかった。
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