第1章 はじまりの朝

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うちは、両親が一昨年に車両事故に巻き込まれ他界しており、今は長男の僕ユウスケと大学生の妹のユキの二人で暮らしている。 両親の生命保険と蓄え、そして僕がすでに社会人として働いていたこともあり、なんとか生活に不便は無い。 まぁ実際は今朝のように、ユキが大学やアルバイトの合間に家事全般をしてくれているおかげなのだが。 シャワー室に入り、冷たいめの水を全身に浴びながら、今日の予定を思い出す。 (今日は仕事後に香(カオリ)と夕飯の約束してたっけ…) 香は僕の彼女だ。大学生の頃からの長い付き合いになる。 30歳にもなってなかなか『結婚』の二文字を口に出せない僕にも愛想を尽かさずに一緒に居てくれる。 彼女はいつも「まだ親御さんが亡くなったばかりなんだから、ユキちゃんが成人してからでいいからね。」と僕とユキを気遣ってくれる。 今日はそんな香と1週間ぶりの夕飯の約束の日だった。
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