プロローグ

3/10

833人が本棚に入れています
本棚に追加
/719ページ
 将来的には、どのような怪我や病気にも対応可能な万能の錠剤も可能と考えられているが、2206年の現時点では、一粒の錠剤では効用が限定されており、また特定部位に確実に効果を及ぼすよう、国際資格である工学医療技師の資格を有した者の詳細な事前調整を必要とするため、処方薬という扱いであり、重症の患者を治療するためには、やはり数日から数週間の調整が必要となることもあることから、救急救命医療という概念を駆逐するまでには至っていない。  血管から体内のほとんどの部位へ事前のプログラムに従い移動するナノマシーンが、当該部位へ達した後、同じく事前プログラムどおりに治療する。そして設定された条件にまで部位の損傷や欠損等が修復されれば、これまた事前のプログラムに従い機能を失って崩壊、老廃物として体外へと排泄される。このようなアポトーシス機能を付与されている理由は、実験当初のナノタブが、機能も失わず、体外へ排出されることもなく必要以上の働きを継続した結果、癌化と同様な悪影響をもたらしたという失敗経験に基づくものだ。
/719ページ

最初のコメントを投稿しよう!

833人が本棚に入れています
本棚に追加