プロローグ

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 シムタブとは、シミュレータータブレットの略で、カタカナ略称は同じだが、動的記憶に適したデータ構造に利用されるシンボルテーブルの略称では、もちろんない。  爆発的な普及により、価格を徐々に下げつつあると雖も、まだまだ高額と呼んで間違いのないシムタブは、発売当初は、極めて学術的な用途…例えば、大学などの研究機関での利用…に留まっていた。しかし、救急救命医療師や交通運輸機器のオペレーターなど、ある程度の技能を必要とする者が、擬似的に体験を積むことで、短期間に実際に必要なレベルまで経験値を高められることから需要は高く、さらなる改良が施されていった。  何時の時代でも、そうした技術は、やがて娯楽にも応用されるようになる。  シムタブによる映画やアニメの主人公の疑似体験などは、瞬く間に大ヒットした。ストーリーが決まっているこうした作品の追体験は、プログラミングが比較的容易であるため、映画やアニメは制作段階からスタッフとして工学医療技師をメンバーに加えるのが常識となった。
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