プロローグ

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 シムタブが爆発的に普及していくなか、粗悪な幻覚ドラッグタイプや人気映画などを移動中に服用してしまい、当然、効用が切れるまではシムタブの見せる仮想体験世界のある意味、虜(とりこ)となってしまうウッカリ者が現れる。迷惑なこうした者たちの行為は、当然、交通事故を起こすか、そうでなくても街なかで突然、意識を失ったかのように倒れるという事態を引き起こし、一時期、シムタブ事故として社会問題になりかけた。  しかし、そのような間抜けな事故がニュースで流れれば、好んで人前で体を無防備に投げ出すような愚かな者は少数…残念なことに皆無ではない…で、シムタブの箱に、昔の風邪薬の様に「服用後の運転は控えてください」的な注意書きがされた時には、あらかた、その記載を読む必要は無くなっていた。
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