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「大護…どうしたの?」
「いや…悪ぃ、何でもない」
実は大護は、親の話をするといつもこうだった。
知りもしない人間の話で盛り上がれる人の気が知らないと思うのが主な理由だが、それだけにしては不自然な程、いつも決まって機嫌を悪くする。
二人は尚も会話を交わしながら共に歩を進める中、何故か大護はピタッと立ち止まる。
「あれ……?」
「どしたの大護?」
「何処だ…ここ?」
余程話に夢中になっていたのか、二人はいつの間にか見知らぬ土地に来てしまっていたようだった。
大護はすぐに引き返そうとするが、
「……!!」
ふと遠い視線の先に、一人の男の人影が見え、無意識の内にそれを注目していた。
そして、その人影がゆっくりとこちらへ歩み寄ってくると、
「…っ!!!」
大護は、何故か全身に鳥肌が立ち、また無意識の内に桜の手を引いて走り出していた。
「どうしたの大護!」
「何かヤベェ!あいつ何かヤベェ気がする!!」
大護は一目散に走り、もう見えない距離まで来るとゆっくりと減速し、静かに息を整える。
しかしそんな時、
「大護……!」
「え…?」
確かに後ろにいた筈のあの人影は、いつの間にか二人のすぐ目前に立ちはだかっており、大護は息も止まりそうな程驚きを隠せない。
近くで見たその男の容姿は、歳は三十代前半から半ばくらい、額には手拭いのような物を巻いており、髪型は無造作にボサボサだった。
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