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それだけなら何も違和感は無いが、
「何なんだよアレ…!」
向かって右側の左頬には二筋の切り傷があり、反対側の右半分のみ包帯で覆われている。
顔だけで無く、ノースリーブから覗く右半身全てが包帯でグルグル巻きになっており、その鋭い目付きはまるで血に飢えた野獣のようだった。
そんな男の異様な風体に対し、大護は恐怖すら感じながら手に汗を握っていた。
そして男は、一定の位置でゆっくりと立ち止まると、
「お前が"火渡大護"か……」
「…!!」
低い声でそう漏らした直後、突然大護は背後へ大きく吹き飛ばされた。
「大護!!」
桜は咄嗟に振り返りながら叫ぶ一方、ゴミ山の中から大護はゆっくりと立ち上がる。
そんな大護に向け、男は冷たい口調で静かに言葉を投げた。
「…お前の親父にはでかい"借り"がある…」
「…!!!」
男がそう言うと、立ち上がったばかりの大護は再び背後へ大きく吹き飛ばされる。
その時、男は両手をポケットに入れたままピクリとも動いておらず、風すら感じさせずに大護は吹き飛ばされていた。
「何?何が起きたの?」
それを間近で見ていた筈の桜も何が起こったのか理解出来ず、恐怖のあまりに震えが止まらなくなった。
男は、少し飛ばし過ぎたと言わんばかりの様子で、ゆっくりと大護の方へ歩み寄ろうとすると、
「何だお前は…?」
「……!」
そこへ桜が、両手を両翼に翳して道を塞ぐ。
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