~第壱幕~

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それだけなら何も違和感は無いが、 「何なんだよアレ…!」 向かって右側の左頬には二筋の切り傷があり、反対側の右半分のみ包帯で覆われている。 顔だけで無く、ノースリーブから覗く右半身全てが包帯でグルグル巻きになっており、その鋭い目付きはまるで血に飢えた野獣のようだった。 そんな男の異様な風体に対し、大護は恐怖すら感じながら手に汗を握っていた。 そして男は、一定の位置でゆっくりと立ち止まると、 「お前が"火渡大護"か……」 「…!!」 低い声でそう漏らした直後、突然大護は背後へ大きく吹き飛ばされた。 「大護!!」 桜は咄嗟に振り返りながら叫ぶ一方、ゴミ山の中から大護はゆっくりと立ち上がる。 そんな大護に向け、男は冷たい口調で静かに言葉を投げた。 「…お前の親父にはでかい"借り"がある…」 「…!!!」 男がそう言うと、立ち上がったばかりの大護は再び背後へ大きく吹き飛ばされる。 その時、男は両手をポケットに入れたままピクリとも動いておらず、風すら感じさせずに大護は吹き飛ばされていた。 「何?何が起きたの?」 それを間近で見ていた筈の桜も何が起こったのか理解出来ず、恐怖のあまりに震えが止まらなくなった。 男は、少し飛ばし過ぎたと言わんばかりの様子で、ゆっくりと大護の方へ歩み寄ろうとすると、 「何だお前は…?」 「……!」 そこへ桜が、両手を両翼に翳して道を塞ぐ。
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