~第壱幕~

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男は桜の顔をまっすぐ見詰めると、 「お前もアイツの娘か、面影がある…」 「…!!」 その一言に対し、桜は全身がビクッと反応する。 すると、 「桜ァっ!!」 「…!!」 大護が咄嗟に桜を押し倒し、直後に桜がいた場所を何か通り過ぎたような感覚を抱き、大護はすかさず桜の手を引いて走り出した。 「あいつ何かヤベェ、親父に何かしらの恨みを持ってる奴かもしれねぇ!」 「うん、ヤバい!確かにヤバい!!」 大護と桜は走りながら口々にそう言っていると、 「何処へ行く気だ…?」 「…!!!」 たった今まで背後にいた筈の男が、いつの間にか目前で道を塞ぐかのように立っている光景に、大護はまた息が止まりそうな程驚きを隠せなかった。 そんな男に対し大護は、 「逃げろ桜!」 桜の背を無理矢理押し、自身は囮になって逃がそうと試みた。 桜はそれを躊躇うが、 「早く行けェ!!」 「…!!」 その時の大護の気迫は凄まじく、桜は何も言えないまま走り出していた。 先に逃げた桜は気にもせず、男は大護のみを睨んでいると、 「ちょいと喧嘩するかオッサン!」 「……」 大護は不敵にニッと笑みを浮かべ、男と喧嘩する意思を見せる。 「くらえ!!」 「……」 大護は勢いよく踏み込みながら右腕を突き出すが、男はそれを軽くかわす。 しかし大護は、また気を取り直してすぐにもう一度拳を突き出すが、それすらも軽くかわされる。
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