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大護の部屋は、一人で住むには少し広過ぎる為、今日から桜ともう一人は三人で一緒に暮らす事になった。
この渉が管理人を勤めるアパートは、共同玄関を入ってすぐに食堂があり、その先の通路を真っ直ぐ進むと三つの部屋が並び、左から順に一・二・三号室と続く。
向かって左側には渉が住む管理人室があり、その反対側には二階へ続く階段があり、その先に同じように三つの部屋が並び、また同じように左から四・五・六号室と続く。
大護はその五号室で暮らしており、今帰ってきた深雪は一階の二号室で一人で暮らしている。
更に一号室には若い女性が一人、六号室には中学生の男女の双子、四号室にはまだ会った事がない誰かが各々暮らしているらしい。
大護が目覚めて安心した桜は、
「それじゃあ私、近所の皆さんに挨拶してくる!」
勢いよく部屋を出て行った。
大護はそれを見送ると、改めて寝転がって天井を見上げる。
「久神か…」
その"久神"という単語が妙に気になった大護は、勢いをつけてバッと立ち上がった。
その時、何気なく自身を見回してみると、全身にあった痣や傷は殆ど完治しているようで痛みも無く、久神の治癒力の高さを実感する。
大護は、いつか何処かで目にした記憶がある"母の日記"を探した。
部屋の奥にある、天井にも届く程の大きな本棚は、"両親の遺品だから"という理由で破棄せず残され、しかし読書にはあまり興味のない大護により長い間放置され、酷く埃を被っていた。
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