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その時、
「……!」
ふと大護は、何とも言えない不思議な感覚に襲われた。
それは胸騒ぎなのか、何かしらの違和感に苛まれ、不意に部屋を飛び出す。
桜は近所の挨拶に行くと言っていたので、まだ帰ってきていない六号室は飛ばし、その下の深雪が一人で暮らす三号室へ向かった。
「どしたの大兄、そんなに慌てて?」
「桜!桜は来てねぇか!」
「と、とりあえず落ち着いて!」
物凄い勢いの大護に対し深雪は冷静に対処し、何とか宥めて落ち着いて説明する。
「桜ちゃんなら、私と栄ちゃんとこに順番に挨拶しに来てくれて、後はすぐに買い物に出掛けたよ。大兄に美味しい料理を作ってあげるんだって張りきってた」
「わかった、ありがと!」
"栄ちゃん"というのは一号室に住む佐々木栄子の愛称だが、大護はそれを聞くとすぐにその場を飛び出していった。
そんな大護の後ろ姿を深雪はきょとんとした表情で見送る。
大護はアパートを飛び出すと、すぐに近くのスーパーがあるであろう方へ向かって一目散に走り出した。
しかし、数分後そのスーパーに辿り着いてもそこに桜の姿は無く、あちこちを見回して探すが、どうも見当たらない。
何処へ行ってしまったか心当たりも無くおろおろとしていると、
「……!」
ふと、何とも言えない凶々しい気配を感じ、大護は無意識にそこへ向かって走り出した。
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