~第壱幕~

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それからまた十六年の時が過ぎ、幻妖が滅んで久神が消滅してから計二十年もの月日が流れていた。 ー春この頃、四分の一人間の血が混じった久神の子・火渡大護は、高校二年生になっていた。 容姿は若い頃の父と瓜二つだが、気の抜けた目付きは母譲りで、何故か前髪の一部分のみメッシュが入っているかのように白く染まっており、襟足は長く後ろで綺麗に結われている。 大護の両親は、大護が物心付く前の幼い頃に亡くなっており、その後は父の盟友に預けられるが、その盟友もいつからか失踪して生死及び行方不明となった為、今はそのまた知り合いが管理人を勤めるアパートの一室に一人で住まわせて貰っている。 アパートと言っても部屋は中々広く、高校生が一人で住むには余りあるものだった。 そんなある日、大護は朝からご機嫌だった。 「お、どうしたんだ大ちゃん。今日はえらくご機嫌じゃね?」 「そう見える?」 そう言って大護に笑顔で話し掛ける三十代半ばの好青年は、大護が住むアパートの管理人・海藤渉だった。 そんな渉に対し、大護はニヤニヤしながら、ご機嫌な理由を答えた。 「実は今日さ、久々に妹達に会えんだよ!」 「へぇ、妹。まだ幼稚園通ってた頃くらい以来だな、そりゃテンションも上がるわぁ」 「だろ?」 大護には妹が二人いた。 二人共大護より一つ下の、双子の妹だった。
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