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飯時頃の時刻になると、大護は店の様子を眺めていた。
翔次は厨房で手早く次々と料理を仕上げ、修が配膳して客席へと運ぶ。
更に裕紀も子供を頭上で浮遊させたまま慣れた様子で素早く洗い物を片付けていた。
翔次の料理の味は確かなようで、そして修の接客も好感触という事もあり、山奥とはいえそこそこ繁盛している。
中でも特に好評なのは、翔次が厨房から投げた皿を修が客席前で受け取るという、そのアクロバティックさが目新しくて客受けが良かった。
一方で裕紀は洗い場から自身の能力である"透明の腕(トラペアアーム)"を駆使して食器を下げており、その能力を知らない者にとっては食器がひとりでに浮遊しているように見え、超能力や手品のようで面白い。
「凄ェ……」
三人の連携があまりに凄まじく、大護は思わず息を飲む。
互いが互いを深く信頼しているのが見ているだけでも伝わる光景だった。
飯時も過ぎた三時頃、店の雰囲気も落ち着き始めると、修は額を手の甲で拭いながら一息吐き、一方で翔次は額に巻いた手拭いを解いて巻き直し、仕込みを再開する。
子龍と呼ばれた少年はいつの間にか帰ったようで、一方でレイは端の席に着いて昼寝をしていた。
まるで平和な日常が流れる中、大護はふと思い出す。
「虹平は……!」
それは、翔次の四人目の弟子の存在だった。
聞いた話によると、裕紀が一人目、レイが二人目、子龍が三人目…そして、四人目の弟子である虹平がいる筈だった。
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