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牙統がまたグッと鎖を引き寄せた事で鉄は背を大きく引き裂かれ、遂にそれが致命傷となって力尽き、その場で倒れてしまった。
しかしそれでも鉄は立ち上がろうとするが、
「人間にしては良く頑張ったよ…」
無情にも牙統は、そんな鉄に容赦なくトドメを刺す。
それによりいつの間にか里の中で生き残っているのは、牙統と子龍の二人だけになっていた。
牙統は子龍に向かってゆっくりと歩み寄り、これまたゆっくりと鎌を振りかぶると、
「透明砲(トラペア・キャノン)!!」
そこへ間一髪間に合った裕紀が、咄嗟に子龍を庇って牙統に攻撃する。
流石にかわしきれなかった牙統は背後へ大きく吹き飛ばされて転がり、暫くしてその場で横たわった。
「大丈夫か子龍!」
「裕紀さん……」
裕紀はすかさず子龍の元へ駆け寄るが、すぐ近くで既に息絶えた雹虎と鉄の存在に気付き、顔をしかめる。
「クソ…間に合わなかったのか!」
そんな裕紀に対し牙統はゆっくりと立ち上がり、コキッと音を鳴らして首を傾げながら、怪訝な表情を浮かべた。
「おかしい……敢えて逃がした鼠二匹が連れてきた餌は、あんただけか?」
「…!!どういう事だ?」
牙統の言葉の意味が裕紀にはわからなかったが、続く言葉により全てを理解してしまう。
「だからぁ……あの人の想い人からあんたらを遠ざける為にわざわざこんな派手な事したのに、しっかり釣られてのこのこやってきたのはあんただけかって事だよ…あの人の"兄弟子"のあんただけ」
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