~第参拾漆幕~

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脇には和嶽から連れてきた子龍の姿もあり、夢ではないとわかる。 訳がわからないまま、裕紀は苦しむ修を介抱した。 「ぅ…産まれそう……」 「産まれる?産まれるのか!」 裕紀はすかさず修を奥の布団で寝かせ、力が入り易いように手を握り締める。 「頑張れ修!もうすぐ翔次も引き返してくるから!」 一方でレイと子龍はどうしていいかわからず、脇であたふたしていた。 「レイ!すぐに翔次に連絡してくれ!」 「お、おう!……あ、ダメだ。あの人携帯持ってない!」 「秋が一緒にいる筈だ、秋の方に電話しろ!早く!」 「そうか!」 「子龍、急いで桶に水を組んできてくれ!それと綺麗な手拭いと!」 「は、はい!」 そんな二人に裕紀は的確に指示し、二人もすかさずそれに応える。 レイの電話は繋がり、レイの口から簡潔に状況は説明されるが、 「…わかった…お前らは修についていてやってくれ…」 それに対し翔次は、秋と千広には修の元へと向かうよう頼み、自身は虹平がいるであろう和嶽へと向かう意思を示す。 「翔次!」 「…今あいつを放置するのは危険だ、俺が行って食い止める…」 「でも!翔さん久神じゃなくなったのに、一人じゃ危険だよ!」 「……!」 大護は知らなかった。 翔次や千広らのようにかつて久神だった者らは、今はその力を無くして人間になってしまったという事を。
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